はじめまして、本日はよろしくったらよろしく。
ま、まさか本当に訪ねて来るとは(苦笑)
成長期のファンにはよくあることですよ。ケーケッケ
橋田さんが犬ランプをデザインされたということで、
当時のお話等をお聞かせ頂ければと思います。
ど…どんとこいっ
SNSの反響が大きくて、私自身も事態が呑み込めていない
ので、良い機会かもしれませんね。
事の発端である、うてにゃんのインスタにコメントを
下さったきっかけは何だったのでしょうか?
九州にいる子どもが、Joyfullで犬ランプを見かけた
らしく、「お父さんのデザインしたランプがあるで」
と、去年(2017年)教えてくれました。
Joyfullは九州ではポピュラーなファミレスらしいです。
昔から犬ランプを店内インテリアに採用していたらしい
のですが、私も最近まで全く知りませんでした。
ファミレスに置いてあるのは知らなかったので、他にも
あるのかなぁと、「ジョイフル 犬 ランプ」等の検索
ワードで調べてみたら……
今まで一度も検索されてなかったのが意外です。
Joyfullをはじめ、犬ランプの画像が色々見つかった
中に、珍しく2体一緒に写ってる写真を見つけたので、
コメントを入れました。
あの時は投稿から1年以上経っていたので、あまりの
不意打ちに「きさま、なにヤツ‼」ときく余裕はもちろん
なく…ただただ驚きました。
それと、検索ではランプの他に、ある漫画のシーンがよく
表示されるので何だろう?と思いました。
そこで初めて『こいつら100%伝説』という漫画に登場
しているらしい、と知りました。
それまで全くご存知なかったのですか!?
漫画も作者さんのお名前も全く知りませんでした。
岡田あーみんさんはどのような漫画家さんなのですか?
1980年~90年代に作品を発表されていました。
知名度は主観になりますが、今でも根強いファンが一定数
いると信じています。著名人の方でファンを公言する方も
インタビューやエッセー等で稀にお見受けします。
へえ~!そうですかぁ!
漫画のネタになっていたことは、周囲の方も今まで
ご存知なかったのですか?
この騒ぎの後周囲に聞いたら、岡田あーみんさんや
『お父さんは心配症』を知ってる人はそれなりに
いました。でも、『お父さん~』以降の作品は世代的に
読んでいなかったらしくて知らなかったらしいです。
ご存知なかったということで、お土産その1です。
ありがとうございます。そう、このシーンです(笑)
まさか割られてしまうとは、ちょっと複雑ですね……
制作者様を前に憚かられますが……、大破したからこそ、
長く印象に残るエピソードになったと思います。
「グ~ログ~ロ」の擬音とともに(笑)
25年以上経っても思い出に残っているんですよねぇ。
同時に、「あの犬ランプは実在していたのかな~?」と
長らく疑問を抱える人生になりました。
犬ランプはいつ、どのようなきっかけで誕生したので
しょうか?
製造は1981年、きっかけはオイルショックです。
37年前!? トイレットペーパー争奪戦……
オイルショックはピンとこないかもしれませんが
“省エネ”や“節電”といった機運が高まって、世の中が
暗い雰囲気になりました。
2011年東日本大震災後と同じような感じです。
震災の後は確かにあかりが消えた実感があります。
非日常的で、明るく楽しい空間であるはずの商業施設も
節電の影響で暗い。節電していたとしても、楽しくなる
ような、そこに在るだけで和むような製品を作ろう、と
思ったのがきっかけです。
当時は会社にお勤めだったのですか?
照明器具メーカーで主に商品開発を担当していました。
それまでもオブジェ的な照明をデザインされていたの
ですか?
いえ、それまではシンプルな工業デザインが主でした。
なので、動物型のランプは今までの商品路線と違うので
社内では難色を示す人もいました。
新しい挑戦は色々ご苦労も多かったと思います。
しかし社長がOKを出してくれて商品化に至りました。
「橋田の提案ならやってみろ」と。
今までの実績が評価されていたんですね。
モチーフを犬にしたのは犬がお好きだからですか?
特に犬が好きだったわけではないんですよ。
爆弾発言(笑)
犬の前にアヒル型のランプを作っています。
あ~!写真しか見たことありませんが、表情が犬と似てる
なーと思ってました。橋田さんの作だったとは納得です。
本来は原型師が最初に粘土で型を作り修正を加えていく
のですが、「こんな感じで」と私が粘土を叩きつけた
形がそのまま商品化されてしまいました(笑)
そんなアバウトな制作秘話が……。
だからけっこうボテっとしてるでしょ、アヒル先輩は
自宅にありますよ。
私は橋田さんの作品のフォルムや表情がとても鋤です。
ここにあるランプも、どれもかわいいです♪
では犬ランプも橋田さんが最初から原型を?
いえ、犬ランプの最初の型は原型師が作りました。
ただ、最初に見せられたのが、鼻がシュッと長くて
シェパードみたいなリアルな犬の造形でした。
和むというより番犬っぽいですね。
小さい子どもが見て「わんちゃん」という感じにしたく
て、「これじゃない!」と言って、粘土でできた犬の鼻を
折ってだいぶ削りました。
ダイナミック修正(笑)表情にも何かこだわりが?
見る人によって色んな解釈の余地を残すよう、あえて表情
はつけませんでした。
「もっと表情つけて笑わす感じにしよう」と社内では
眉毛を描かれたり色々されましたが、違う、“普通”に
したいと。
“普通”とは?
そこに在って当たり前、日常に溶け込むような製品に
したかったんです。
コードが首から出ているのも、犬のリードに見えるよう
にしたからです。首輪とコードの色も発注してこの色にして
もらいました。
なるほど~、コードも太めですよね。配色も“お父さん犬”
よりずっと前に登場していたのですね。
首からコードを出したのは、ボディと頭を灯すために
首の位置に光源をつけた構造上の理由もあります。
首が回るのも表情と関係が?
双方向の光源を首につけたのでここから分離します。
結果的に首が回るので、それで多少表情が変化していいだ
ろうと。見る人が参加できる余地を残しておきたかったの
です。
実は、私も電球交換の時に頭を割ってしまったことが
あって(苦笑)
えええ!? 創造主手づからグーログーロを!?(笑)
私の場合は手を滑らせてですが、会社で頭だけもらって
すげ替えたのでこのランプは頭だけ2代目です。
頭といえば、私と友人の犬ランプでは表情が少し違うの
ですが、どうしてかお判りになりますか?
少しず~つ、マイナーチェンジされていたみたいです。
初期型は、黒目に青の縁取りがあり鼻は黒色、口の線は
ありません。
私のランプは初期型っぽいですね。
うてにゃんさんはいつ購入されたのですか?
私は2016年に偶然リサイクルショップで見つけました。
店先でふと目が合って、「え!?もしかして……!?」と、
目が釘付けになりました。
かなり売れたのでリサイクルショップに出回ることも
あるかもしれませんね。
製造台数や販売期間等は覚えていますか?
その後会社から独立してしまったので、正確な数は分かり
ませんが、発売当時からとにかく沢山売れました。
店舗専門で卸していたわけではないのですか?
小売りもしました。会社では新しいコンセプトの商品
だったので営業担当が新しい販路を拓いてくれて、
キディランドでも売られていたこともあります。
岡田先生はゲーム大会の景品で頂いたそうなので、
小売りされていたのなら合点がいきますね。
その後、他社からも同じような商品が多く発売された
のですが、結果的にこの犬ランプが30年を超える一番の
ロングセラーとなりました。
“普通”にした結果、日常に溶け込んでご長寿犬になった
のですね。現在も販売中なのでしょうか?
いえ、会社が合併して最近製造が終了したそうです。
何たる悲報…。探していた友人によると、2015年頃迄
ネットでは在庫があったらしいのです。
それが最後のチャンスだったかもしれませんね。
うおぉう、神よ…
たくさん売れたせいか、香港で偽物を見かけたことが
あります。
偽物ですか!?
香港かアジアのどこかで“犬ランプを見かけた”という
画像はネットで見たことがあります。
社員旅行で香港に行った時に街中で見かけて、でもどこか
違和感があってよく見たらコードの色も違うし作りも甘
いんです。
外国でどうやって作ったのでしょう?
両脇から粘土等で挟めば型がとれるので、模倣するには
よくある方法です。
なるほど~、今後見分ける時の参考になります。
発売した年、会社の年賀状にも犬ランプの写真が使われ
ました。翌年(1982年)が戌年だったからと思います。
会社の“顔”にまでなっていたとは(笑)そして今年2018年
3回目の干支でま・さ・かの展開です!
ところで、うてにゃんさん、今日は取材か何かですか?
・・・・・・・・(長すぎる沈黙)
拙者はべつに怪しい者ではござらんエヘヘ
東京からやって来た一般人でござる ゲホゲホ
ほ……ほ~~これはまたお珍しい……。
長年の疑問を解消したいと、好奇心の発露で罷り越し候。
同行できなかった友人2人から、橋田さんへお手紙と
お土産も預かってきました。お土産その2です。
ありがとうございます、この本は?
洒落子氏が岡田あーみん先生の作品愛をまとめた本です。
聖地巡礼の他に、犬ランプの件でJoyfull様に取材もして
います。
このワンちゃんは?
私が編み物で作りました。戌年なので、犬ランプを再現
してみようと思ったのがきっかけです。
へ~、編み物で!? かわいいですね。
ここに置いておくと、通りがかる子どもが気づいたりする
んです。並べると親子犬みたいですよ。
EじゃんGジャン最高じゃん!
それにしても、皆さん行動力がありますね。
形は違えど、ファンの皆さんが長年それぞれの立場や想い
で作品を大切にされていると感じます。
3人は昔からのお友達ですか?
いえ、3人とも全く接点がなかったのですが、犬ランプが
縁で偶然知り合いました。交友関係でまさかの展開です。
36年経ってここまで予期せぬことが起こるとは、
私も思ってもいませんでした。今回のことはただただ、
「不思議」の一言です。人生面白いです。
ええーい!
それじゃあエンディングだ、いってみよーか!
本日は本当にありがとうございました!
(個性きついよなぁ……。)
東京からわざわざご苦労さまでした。
これは私から皆さんへのお土産です。
もったいのうございます!(気絶)

※2018年4月6日(金)大阪市・照明塾にて。
※橋田さんは実際は関西弁でお話しされているので脳内変換して下さい。

照明塾
あかりのレシピ
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インタビュー後記


御礼

企画・制作 うてにゃん
/ Special Thanks to 宇部洒落子&かおかお
※本件について、岡田あーみん先生及びりぼん編集部様への確認は畏れ多くて行っておりません。
犬ランプの同一性については独自の見解です。この先の検証はどなたかよろしくお願いします。